サマセット・モームの「劇場」と映画「華麗なる恋の舞台で」

イギリス

人間観察の達人と言われるだけあって、サマセット・モーム(Somerset Maugham)は、人物描写がとってもお上手です。女性の心理描写の書き方も、ほんっとに男性が書いたの?っていうくらい女性より女性の心理を事細かに理解してるのではないかと思うくらいです。

そういう女性心理の書き方が抜群な小説が、中年にさしかかった女優のお話し劇場」(Theater)ではないでしょうか。まじめに描かれているはずの人物描写に、くすっと笑ったりもします。

主人公のジュリアは46才で、年齢の壁と日々密かに格闘しています。そんな中、はるか昔の忘れていた感情をにふわ~っと浸ってみたりもするけど、年齢の現実を突き付けられてもがいたりします。女優と言う人に見られる仕事をしながら、人との出会いの中で試行錯誤を繰り返しているようです。回りは曲者だらけですが、本人はもっと上手の曲者です。そんなジュリアが途中よろけそうになりながら、そんなそぶりは全く見せずひたすらしたたかに突き進む。寄せては返す波のごとく、いや、津波のごとく。そして最後は、この年齢の今の私が最高!年齢の壁に打ち勝ち、周りを振り向かせ、女優として頂点に立つ。怖いものなんてなくなっちゃって、心おきなくビフテキなんか食べちゃう。ブラボー!!ってお話しです。

多分女優さんとか脚光を浴びる商売の人は、こういう要素があっていいのだと思います。というか、ないと辛い商売かも。ちらっと松田聖子ちゃん、ぴったりと思ったり。。笑

この面白い小説、映画化もされています。アネット・ベニングがジュリアを演じた「華麗なる恋の舞台で」(BEING JULIA)です。2004年の作品でアネットはこの時アカデミー主演女優賞にノミネートされています。小説とは若干違うところもありますし、想像力を掻き立てるモームの小説には勝るとは言えないけど、魅力的なアネット・ベニングという女優が女優を演じているだけでも見る価値ありかなと思います。


未読ですが、「五彩のヴェール」も映画化されています。ナオミ・ワッツエドワード・ノートン出演の映画「ペインテッド・ヴェール ある貴婦人の過ち

観た時はモームの小説の映画とは知らずでしたが、この映画もおすすめです。


サマセット・モーム 1874年1月25日~1965年12月16日  イギリス

お父様は弁護士、お母さまは名家の美女。

フランスで生まれましたが、8才で母、10才で父を亡くし、イギリスの叔父に引き取られます。叔父とはそりが合わないし、学校では英語が上手く話せない事と吃音とでコンプレックスを持ちます。

多分学校ではかなり浮いていた存在だったのではないでしょうか。牧師になれと言う叔父と作家になりたいモーム。結局医師の学校へ進学。作家、医者と、秘密情報部の諜報員、、ついでに同性愛者。一癖も二癖もあり、ちょっと屈折しているような感のあるモーム。

生い立ちを知ると、そうなるのかなとも思いますが、人間観察に優れ、面白い小説を書けたのは、置かれた環境のおかげでもあるような気がします。

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